小説

  • 新春の宴の席で

    3月6日の弟の日用の嵐風。新春の宴の席で起きたこと。

  • 魔王とネズミ

    悪魔城に大量に発生したネズミを巡ってドラキュラ伯爵が奔走する。(ドラシモというより伯爵様萌えの話)

  • 花笑みの宴・5

    多忙が続き、自力ではまともに眠ることができなくなったシモン。心配した伯爵に「薔薇園を見に行かないか」と誘われて、気分転換を図るが、蔓薔薇の香りを嗅いだ途端、強烈な情欲がこみ上げてしまう。「少し休もう」と管理小屋へと招かれるが、そこは薔薇園よりも濃密な芳香に満ち満ちていた。

  • 花笑みの宴・4

    多忙が続き、自力ではまともに眠ることができなくなったシモン。心配した伯爵に「薔薇園を見に行かないか」と誘われて、気分転換を図るが、蔓薔薇の香りを嗅いだ途端、強烈な情欲がこみ上げてしまう。「少し休もう」と管理小屋へと招かれるが、そこは薔薇園よりも濃密な芳香に満ち満ちていた。

  • 花笑みの宴・3

    多忙が続き、自力ではまともに眠ることができなくなったシモン。心配した伯爵に「薔薇園を見に行かないか」と誘われて、気分転換を図るが、蔓薔薇の香りを嗅いだ途端、強烈な情欲がこみ上げてしまう。「少し休もう」と管理小屋へと招かれるが、そこは薔薇園よりも濃密な芳香に満ち満ちていた。

  • 花笑みの宴・2

    多忙が続き、自力ではまともに眠ることができなくなったシモン。心配した伯爵に「薔薇園を見に行かないか」と誘われて、気分転換を図るが、蔓薔薇の香りを嗅いだ途端、強烈な情欲がこみ上げてしまう。「少し休もう」と管理小屋へと招かれるが、そこは薔薇園よりも濃密な芳香に満ち満ちていた。

  • 花笑みの宴・1

    多忙が続き、自力ではまともに眠ることができなくなったシモン。心配した伯爵に「薔薇園を見に行かないか」と誘われて、気分転換を図るが、蔓薔薇の香りを嗅いだ途端、強烈な情欲がこみ上げてしまう。「少し休もう」と管理小屋へと招かれるが、そこは薔薇園よりも濃密な芳香に満ち満ちていた。

  • 1、2、3…

    あらゆるものの数をかぞえる伯爵と、それに付き合うシモンの話。

  • カウントの刺繍

    刺繍に没頭する伯爵と、夏の夜の思い出を瞼に浮かべるシモン。

  • 白いイルカで健康に

    エネマグラを試すことになったシモンと、それを見守る伯爵。

  • 一万年後も、その先も

    調子を崩した伯爵。原因不明の気塞ぎになった彼を力づけようと、シモンは様々な行動に出るが、いずれも効果はなく、伯爵は日ごとに衰弱していく。思い余って血を分け与えようとしたシモンを制して、伯爵はある飲み物を渡した。

  • 個室にて

    パーティー会場で伯爵とぶつかり、ワインを服にこぼしてしまったシモン。染み抜きをしようとトイレに連れ込まれたが、それは伯爵の罠だった。

  • きっと育めるもの・7

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・6

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・5

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・4

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・3

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・2

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • きっと育めるもの・1

    呪いのかかったりんごを食べたために、子供の姿に戻ってしまったシモン。記憶喪失となったシモンを保護するため、伯爵は偽名を名乗り、少年に自身の魔力を分け与える。(※シモンショタ化)

  • 29

    戦いの記録であるゲームソフトの発売日を記念して、シモン主役のパーティーが開かれた。伯爵はコウモリに身を変えてそのなりゆきを見守っていたが、29周年だというのに肉料理が影もかたちもないことに、だんだんと苛立ちを覚えるようになる。

  • Copy

    新しい医療器具の開発のため、シモンは自身の下半身をコピー機で写し取る。最初は純粋な義務感からだったが、だんだんとみだらな印刷に夢中になっていく。はしたない遊びは伯爵に見つかり、シモンは甘いお仕置きを受ける。

  • 彼とならすべて楽しく

    伯爵とシモンはちょっとした物事を心から楽しむ。顔を合わせるたびに新しい体験をするふたりの、たわいもない日常話。

  • 原因

    連日の戦いの疲れからか、顎に痛みを覚えるシモン。伯爵の診察を受けて、しばらく探索を休むことにしたシモンは、伯爵の書類仕事を手伝うことにする。

  • いくつものサイン

    伯爵とシモンは自分たちだけに通じる愛に満ちたサインを作り、送り合う。

  • 星の寝顔

    流れ星に願い事をしたマリア。翌日、森の中で光輝く卵を拾う。無事に孵そうと皆の協力を得ながら世話をするが、マリアは悪夢にうなされるようになり、だんだんと体調が悪くなっていく。その卵には人の生命を糧にする妖魔の子が宿っていた。

  • ふわふわ!

    城の新たな防衛設備を整えようとしたが、スランプに陥った伯爵はアイディアが浮かばず悩み抜く。気分転換にと、シモンがテレビ観賞を勧めたとき、伯爵は画面に映る光景に閃きを得る。

  • はるかな世界の小さな光・2

    伯爵の私室に奇妙な生物が現れた。それはマグカップに入った、小さな自分たちだった。言葉が通じない彼らを、シモンと一緒に観察する日々が始まる。

  • はるかな世界の小さな光・1

    伯爵の私室に奇妙な生物が現れた。それはマグカップに入った、小さな自分たちだった。言葉が通じない彼らを、シモンと一緒に観察する日々が始まる。

  • 思わぬやりとり

    伯爵にプレゼントをした翌日から、なにをしていても上の空でいる彼を見て不安になるシモン。彼の注意を引くため、異世界の自分たちはシモンに性的なちょっかいをかける。少しの嫉妬を煽るためだったが、それは伯爵の予想外の怒りを買い、シモンをむごたらしく責め抜く方向へと進んでいく。

  • ゆるみしからだよこたえて

    探索中に罠にかかり、大怪我をして帰還したシモン。神薬で命を取り留めたが、ある困った状態異常に見舞われる。全身が綿で詰まった小さな体、ぬいぐるみになってしまったのだ。

  • いつも、いつの間にか

    シモンとの戦いで負ける回数が多くなってきた伯爵。せめて戦い以外で勝利しようと、ゲームや釣りで青年と競おうとする。

  • 祝儀

    新年を迎えた。異世界の自分たちを呼んだ伯爵は、シモンを交えて縁起の良い行事を執り行おうと、筆責め、竿酒、姫始めを愉しんでいく。

  • 血流

    伯爵から携帯電話と自身を模した張型を贈られたシモン。ひとり自室にいるときに伯爵から電話がかかってきて、張型を使いながら会話を続けてくれと頼まれる。

  • PUMPKIN PIE

    ハロウィンの資料を探して城の大書庫を訪れた伯爵とシモン。二階をあたるよう頼まれたシモンは、登り棒をのぼって検索するが、何度も上り下りするうちに股間に変化を来してしまう。

  • 今日を見せて

    伯爵の寝顔を幸せそうに見つめるシモン。今日のできごとを寝顔に反映させる彼のことを、シモンはいとおしげに見つめている。

  • 項目:仲直り

    花粉症に苛まれ、ささいなことから一方的にシモンを怒鳴りつけた伯爵。そのことを後悔しつつも、顔を合わせるきっかけがつかめない。アレルギー治療も進まぬまま、彼は悪夢にうなされる。

  • 相談

    シモンの無自覚な色気に悩まされた伯爵は、異世界の自分たちを呼んで相談をもちかけた。青年に己の無防備さを自覚させるため、三人はめくるめくようなしつけを施す。

  • もだくだ

    シモンの寝顔を見つめる伯爵。寝ている彼を見るうちに、むらむらと欲望の炎が燃えたぎった伯爵は、シモンに性的ないたずらをしようとする。

  • かわいい子犬たち

    親を失った六匹の子犬を引き取った伯爵。悪魔城侵攻の際に母犬を殺してしまった罪悪感から、シモンは子犬たちの生育に身をもって取り組もうとする。

  • 水晶のむこう

    すべての事象を映し出す水晶球を使い、シモンの様子を見つめ続ける伯爵。古の城主は青年の戦いぶりを眺めながら、みだらな妄想に耽っていた。

  • Earworm

    聖なる川のせせらぎが耳について離れなくなってしまった伯爵。彼を助けるためにシモンは様々な行動を起こす。

  • 禁欲・6

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • 禁欲・5

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • 禁欲・4

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • 禁欲・3

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • 禁欲・2

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • 禁欲・1

    聖鞭との心の繋がりが離れようとしている。心身を鍛え直すため、伯爵との逢瀬を控えると告げたシモンに、伯爵はある装飾品を贈る。それは伯爵の執念が込められた呪いの品だった。

  • Tenderness

    今にも息絶えそうなコウモリを抱き上げる伯爵。その弱りゆく姿を自身の敗北した光景に照らし合わせ、彼もこのような光景を見ていたかと、シモンに対して心を馳せる。

  • 外套

    伯爵の外套にしわを付けてしまったシモン。特別なマントの傷を癒すには君の協力がいると伯爵は嘘を並べて、裸になって人肌のアイロンをかけるようシモンに命じる。

  • 80P

    自分たちを題材にした成人向け同人誌を隠れて読んでいたのをシモンに知られてしまった伯爵。薄い本によって興奮をかき立てられたふたりは、本の内容通りに愛し合う。

  • 応えず

    寝ぼけて伯爵に怪我を負わせてしまったシモン。寝ているあいだも自制が必要だとして、伯爵はシモンに尻叩きの罰を与える。

  • 中庭を散策しようと伯爵に誘われるシモン。夕食前の軽い散歩のつもりが、シモンとの語らいが進むうちに、伯爵は自身の存在について昏い思考に陥ってしまう。彼を不安から立ち直らせたのは、ある響きだった。

  • 玉肌(ぎょっき)

    伯爵に勧められて全身脱毛をしたシモン。具合はどうか確認したいと、ベッドの上で裸になるよう促される。

  • 絵画はうつろい

    見慣れない赤毛の青年と伯爵が仲睦まじくしているのを見かけたシモン。悩んだ末に話し合いをしようと伯爵の私室を訪れるが、彼のベッドには赤毛の青年が横たわっていた。

  • 異界にて

    異界の地にてドラキュラ伯爵の牙をその身に受けたシモン。彼を追ってともに同じ世界に来訪した古の城主は、シモンにある稀少な品を預ける。

  • 寝ても覚めても

    朝早くに目覚めたシモン。伯爵との愛の記憶を思い返しながら、自慰行為に耽る。

  • 誇顔

    戦いの記録であるゲームソフトをプレイして思うこと。伯爵とシモンは互いへの理解を一層深める。

  • 誰もこない日

    伯爵とシモンが逢瀬を交わす最中に、狩人の侵攻が始まった。ほどなく撃退するが、貴重なひとときを邪魔された伯爵は激しく煩悶する。

  • してほしいこと

    体調を崩したシモンと、彼の看護をする伯爵。小康を取り戻したシモンに「風呂に入れてほしい」と頼まれた伯爵は、彼と一緒に体を洗う。

  • 睡郷

    地の底で眠り続けるシモンと、彼を守り、百年を過ぎても復活を果たさない伯爵。竜公の祈りに呼応して、救いの光が降りてくる。

  • 協力プレイ

    ファミコンソフトを遊ぶ伯爵とシモン。シモンのプレイ中に、伯爵はしつこくちょっかいをかける。

  • シモンは寝ている伯爵の背中にキスマークを付けるが、手ひどくやり返されてしまう。

  • 夜半(よわ)の寝覚

    熱帯夜。シモンの美しい髪の手触りを思い出した伯爵は、彼のもとを訪れるが、暑苦しさに耐えきれなくなったシモンに「髪をばっさりと切ってほしい」と頼まれてしまう。

  • あちらのほうでも

    シモンは風魔に、伯爵は死神に、対峙したばかりの相手の戦いぶりを滔々と語る。

  • 長雨

    長雨が続く悪魔城。天守の棺で眠り続けている伯爵に、少しでも雨の音を紛らわせるよう耳栓を詰めたシモンは、ふだん思っていることから、面と向かっては言えないことまで、ぽつぽつと心の内を話すようになる。

  • ほんもの

    狩人による城内の破壊行為に憤る伯爵。死神に稀少なワインを献上されたある夜のこと、シモンを呼んでともに愉しむが、酔いがまわり、ある奇妙なアイディアを閃いてしまう。

  • ゆりあう

    L・クロスを磨くシモンと、磨き終わるのを待つ伯爵。なかなか作業が終わらないことに苛立った伯爵は、あれこれとシモンにちょっかいをかける。

  • sentiment (『忘れじの詩(うた)』をもとにした話です)

    伯爵とシモンは本の世界で再会を果たしたが、それから七日ものあいだ、交流が途絶えていた。心配するシモンのもとに、伯爵の使いのコウモリが手紙を届けに来る。

  • 「明日帰る」と、ひとこと

    魔法の靴を求めてあちこちを探索するシモン。最後に訪れた伯爵のもとで求めていたものを手に入れる。

  • 甲にしるしを

    ふとしたことで嫉妬にかられた伯爵はシモンの衣服を裂き、彼を無理やりに抱く。互いに想いを深めたが、服を破いた報いは受けてもらうと、シモンは伯爵に罰を与える。

  • ともに

    鞭を振るう骸骨を見て、恐ろしい思いに囚われるシモン。怒りを覚えた伯爵は声を荒げて自身の思いを口にする。

  • そこに、確かに

    血の糧もなくその存在を維持していられるのか、伯爵を不安に思うシモン。青年の瞳をのぞきこみ、伯爵はあることを告げる。

  • 落葉(A sequel to the Daydream Believer)

    星空を見上げながら神話について語り合う伯爵とシモン。星がまたたいたとき、ある奇跡が起こる。

  • 抱擁

    悪い夢にうなされるシモンと、彼の不安を解消しようと様々な解決策を講じる伯爵。

  • year-end

    聖夜が明けてしばらく後。自身の替え玉を用意していた伯爵に、シモンは情熱的に求められ、ふたりの伯爵にいちどきに愛される。

  • 暖炉の前で

    暖炉の前で語らう伯爵とシモン。話がうまくかみ合わないことにムッときた伯爵は、狼に変身してシモンにちょっかいをかける。

  • きざしの地

    青空が広がる世界を探して、伯爵とシモンは本の外の世界を車で旅する。

  • のばらの目

    雪景色を散策する伯爵とシモン。ふたりで雪うさぎを作って思うこと。

  • 偶々(たまたま)に

    髪の毛が伸びてきたシモン。偶然彼のもとを訪れた伯爵が散髪を促す。

  • Daydream Believer

    壁紙に映る偽りの景色を見つめる伯爵と、彼の秘密を目にするシモン。

  • 熱に癒えて

    人肌のぬくもりをもたない伯爵と、子供のようなぬくもりを持つシモンが、お互いの熱を感じ合い、心身を満たしていく。

  • シモンのマント・3

    ベルモンド家に伝わるマントを求めて、伯爵とシモンが地下洞窟を探索する。

  • シモンのマント・2

    ベルモンド家に伝わるマントを求めて、伯爵とシモンが地下洞窟を探索する。

  • シモンのマント・1

    ベルモンド家に伝わるマントを求めて、伯爵とシモンが地下洞窟を探索する。

  • 続・同席者

    本の世界に集う仲間たちが抱いたシモンへの第一印象と、彼と同じ時代に存在した伯爵が今思うこと。

  • リセット

    体内時計が乱れて寝不足に陥ったシモン。伯爵の協力で睡眠サイクルのリセットに成功する。

  • Sympathy

    聖歌について尋ねたシモンに、伯爵は同じ主題の楽曲を鑑賞させる。

  • 老狩人と狼の眠り

    古城の階段に腰掛けた伯爵とシモンは、50年後に関する夢の話をする。

  • eskimo kiss

    鼻と鼻とをこすり合わせてじゃれるシモンに、伯爵が愛を返す。

  • レジェンドブーツ

    新しいブーツを手に入れたシモンと、彼に対して特別なサービスをする伯爵。

  • 忘れじの詩(うた)・あとがき

     2012年6月のあとがき 去年の9月頃(平成23年)から書き始めた作品がようやっと終わりを迎えたので、少々、この作品に取り組むことになった経歴などを書きたいと思います。 きっかけはpixivで拝見した数々のファンアートでした。 それまで悪…

  • 忘れじの詩(うた)・31

     幾たびもの季節を繰り返し、今年も新雪の積もる冬が訪れた。 道も足も雪に埋まる安寧の時期に外出するものは、風によって凍る前に、やわらかい新雪を目的地まで踏み抜いてゆかねばならない。 体力をつけるのに丁度いいと、孫を連れだし、シモンは自分のそ…

  • 忘れじの詩(うた)・30

     教会のベッドで彼は目覚めた。 ふらふらとさまよい歩いていたところを教会関係者に保護されたのだ。 三日間、こんこんと眠り続け、ようやく話ができるまでに回復した彼を待ち受けていたのは、裁判の誤りを告げる通知と、今後彼の血筋であるベルモンド一族…

  • 忘れじの詩(うた)・29

     天地の境もなく星がまたたいている。 炎の喧噪もここまでは届かない。 水草のほとり、白鳥が眠りについている。真新しい墓、乾燥した大地、土に埋もれた花は白く、ときおり風が吹いては褪せた色の草原に波を描く。 伯爵が転移の術を行使したのだろう、気…

  • 忘れじの詩(うた)・28

     長い長い行進が終わりを迎えた。 町を抜けて城門にたどり着いたシモンのそばから、金色の魂が離れていく。安寧の地にふたたび帰るように、狩人にすべての信頼を寄せて、勝利を願う表情で、天へとのぼっていく。 ひとつのひとつの魂に感謝し、シモンは狩人…

  • 忘れじの詩(うた)・27

     英雄であるはずの狩人が魔王と通じているという噂は、トマス自身がふれまわらずとも、本人不在の裁判で立証されたことだった。トマスは裁判の結果をひとりふたりに話しただけだ。話はそのまま人々のあいだを波濤(はとう)となってうねり、さざめき、端まで…

  • 忘れじの詩(うた)・26

     すべてを燃やし尽くそうとした炎が鎮火し、要塞内は煤と白い煙がたちこめていた。突風が吹いて、その名残を空に飛ばした。女吸血鬼は室内に侵入した煙も同じように払ったのだ。青年はまだ眠っている。夢を見ているのだろうか、その表情はとても静かだ。 突…

  • 忘れじの詩(うた)・25

     雨に濡れる町。 時おり雷鳴が轟き、人々を、家々を震わせる。 ここは以前、狩人と竜公が訪れた小さな民家だ。いまとおなじ夜中に、彼らが尋ねてくるのをわかっていたように、その家の窓からは暖炉の明かりがもれていた。 伯爵は音もなく、細かな影を密集…

  • 忘れじの詩(うた)・24

     時のとまった若木が煙に燻されその葉を暴力的な死にわななかせている。火の粉が幕壁(まくかべ)をこえて空を飛びかっている。中庭は半分以上が火の海だ。井戸の屋根は焼けおちて、煤とともに大小の破片が水の底へと沈んでいった。熱気にあおられた鐘楼から…

  • 忘れじの詩(うた)・23

     今宵は三日月。 魔法の明かりであたりを照らしながら山道を進む一群があった。提灯持ちもいるにはいたが、細い薄明かりの月夜では、ランタンよりもやはり魔法の明かりのほうが便利だった。 道は要塞教会に続いていた。 先頭をイデュリ主教が歩いていた。…

  • 忘れじの詩(うた)・22

     シモンの祈りは星が落ちるように地の底へ下っていった。 底の底へ――世界が変わるほどの下層へ、力も光も失わぬ祈りが行き着く先には、墓所と同じような白霧が漂っていた。 もやのかかった、なにもない空間に、黒い影が立っていた。気品と威厳に満ちた確…

  • 忘れじの詩(うた)・21

     ロザリオを携え、玄義を唱えると、巨石によって封じられていた大橋が開いた。道は城門へと続いている。人の愚かな儀式の末、この世に現れたかりそめの城だ。シモンは疲労を感じさせぬ足取りで城内へ歩んでいく。 この城に天守はない。階段を下る道も石によ…

  • 忘れじの詩(うた)・20

     大地に狩人の血と汗の滲みる時は、あれから五日が経っていた。 町をゆけば通りの角に身をひそめることが増えた。後をつける不審な影が多くなったのだ。懐にはおそらく刃物を忍ばせている、憎悪の足並み。暗闇に同化し、気配を断つシモンは、時おり天を見上…

  • 忘れじの詩(うた)・19

     要塞は朝もやが立ちこめていた。 目覚めると体がひどく冷たかった。すぐに起きあがれるほど身が軽く、痛みはなにも残っていない。胸の軽さが気になった。手首で脈拍を計ると、どうもずいぶんと弱っている。無意識のうちに首筋を触った。穴は開いていなかっ…

  • 忘れじの詩(うた)・18

     雨が降っていた。 風花はその結晶を保てず、夕暮れには山脈一帯へ激しい水音を散らす晩秋の雨に変わった。 閉ざされた要塞の、ある一室で、雨音にまぎれるように熱っぽい息を交じり合わせるふたつの影があった。 青年の体は甘みと匂いがあった。 鍛え上…

  • 忘れじの詩(うた)・17

     事の顛末を別の場所で、別の悪魔が見ていた。最上の力を象徴する大角はくるぶしまでさかしまに事を回(めぐ)らし、金色の目は邪悪にものを見晴るかす。豪腕傲気と黒い脅威を膚に鎧としてまとわせたような厚い身体をもつ悪魔が、今はひとりの人間のために動…

  • 忘れじの詩(うた)・16

     無数のしゃれこうべの眼窩にろうそくの炎が燃えている。 炎の清らかさと人の尊厳を汚す燭台の明かりが、地の底の牢獄を照らしていた。それとは別に、大きさはたいまつの明かりを思わせる炎が、胴輪のような鉄枷に繋がれていた。自身の所有者である悪鬼ども…

  • 忘れじの詩(うた)・15

     今朝はよく晴れ渡り、陽の光は要塞教会の狂った大気をいつも以上に初夏の輝きに満たしていた。 庭の中井戸で水浴びを済ませ、整髪し、髭をあたると、青年はそのまま洗濯に取りかかった。 青年に救われた霊魂たちは、この日、雑事を手伝おうとしなかった。…

  • 忘れじの詩(うた)・14

     蝋燭に火が灯った。シモンは芯の太いそれらに順々に火をうつし、聖堂を厳かな明かりに満たしていく。祈りを捧げるに充分な夜燭(やしょく)で主祭壇や聖杯のかたちが橙色に照らされた。青年は跪き、頭の高さを聖櫃に合わせる。ここで命を失ったものたちの代…

  • 忘れじの詩(うた)・13

     食堂にて。 食後の穏やかさと気のゆるみが伯爵にこんな話をさせた。「君は雑事が似合わんな」 水差しからコップに水を注いでいるシモンに向かい、伯爵は呆れたように肘をついた。「ひとりの生活が長かったのだろうし、刃先や竈を扱う手際も段取りもいいが…

  • 忘れじの詩(うた)・12

     20本目のナイフが白地の壁に突き刺さった。刃自体で的を描くように密接した円となって、それらは間断なく壁に与えられる小刀の衝撃に震えている。標的に当たるまで威力の衰えぬそれは、投射位置からナイフの到達距離までおよそ400メートルは離れていた…

  • 忘れじの詩(うた)・11

     疲れのまま眠り、翌朝、陽光を額に感じていつもどおりに眼を開いてしまった。しかし痛みはまったくなく、少し眩しさを強く感じられる程度で、傷を負ったことなど、血涙の跡がのこる乾燥した頬の引きつりと枕辺の染みでしか実感できなかった。首から肩にかけ…

  • 忘れじの詩(うた)・10

     月だ。 海辺の洞窟に月明かりが差し込めば、きっとこのような氷碧の光があたりを照らし、絶え間ない波影の動きをゆらゆらと岩肌に映し出すのだろう。 夜の草地にくっきりと浮かび上がる自分の短い影を見て、シモンは空を見上げた。丸みを帯びた月の光が周…

  • 忘れじの詩(うた)・9

     異質な空間に死神の力が加わったからか、亡魂による給仕の気配はなく、食卓にはなんの準備もされていなかった。かえってそれで安心したように、シモンは厨房へ向かった。真っ白なテーブルクロスを見た伯爵はひら、と手を振り、あたたかいクリームスープやや…

  • 忘れじの詩(うた)・8

     彼は深い昏夜の眠りについていた。 息もなく身を横たえて瞳をとじている彼の耳に、100年ごとに覚えのあるどうにも嫌な鞭の音が聞こえてきた。眉をねじませ、耳障りな破裂音にいらいらとする。ここはどこだ。六角形のスペースも紅く囲む天鵞絨の肌触りも…

  • 忘れじの詩(うた)・7

     秋の夕照が瞳を穿つような厳しい時間に、当然のことながらふたり一緒に山を下りた。要塞の外は空気が冷たく、乾燥していた。町へ着くころには夜になるだろう。用事を済ませ、ふたたび帰り着くころには山間から朝蔭(あさかげ)が覗くのではないか。急とはい…

  • 忘れじの詩(うた)・6

     寝室にて、シモンが昼寝から目覚めると、午後の陽気に照らされた机の上に、食堂にあった一輪挿しが置かれていた。摘んだばかりのような真新しいエーデルワイスがその白い花弁の影を木目の上にまぶしく落としていた。寝台から起き上がり、シモンは花を手に取…

  • 忘れじの詩(うた)・5

     シモンが食堂の脇を通り過ぎ、厨房に入った。その姿と食堂を交互に見て、伯爵が声をかけた。「用意されているが」驚いたシモンがテーブルの上を見ると、確かに湯気の立ったスープや保存食のタラの燻製を調理したあたたかい練り込みパイがつつましく並べられ…

  • 忘れじの詩(うた)・4

     雲を通した薄い日差し。髪を梳かす乾いた風。太陽も雲の返しも秋の様相であるのに、中庭に渡るそれは未だ強く緑を残す初夏の景色に不似合いだった。 この場所こそが異質であるのに、白い壁に囲まれた要塞の存在感は、舞い下りた秋の性質こそが邪魔であると…

  • 忘れじの詩(うた)・3

     その夜に見た夢もいつもと代わり映えのしない内容だった。 上半身を裸にされ、鞭打ち台に手足を縛られている。 気づいたときには喉から意思の流出を塞ぐようにきつく顎を噛みしめていた。ひとことも声を漏らさぬように、どんな責めにも屈しないように。 …

  • 忘れじの詩(うた)・2

     幻滅したような、あるいは退屈でしょうがないような表情を、伯爵は真向かいに座る彼に向けていた。魔王と吸血鬼狩人が同じ食卓についていた。不安定な存在を維持するために伯爵は彼のそばを離れられず、青年もまた彼につきまとわれて迷惑そうだが、直接害の…

  • 忘れじの詩(うた)・1

     7年は耐えた。 朝靄に似た薄い光がまぶた一枚をへだてた浅い意識を覆い、彼に夢を見させず、また別の朝を迎えさせたが、望みもせず見慣れることとなった寝室の光景は、ベルモンド家の血を引く青年シモンに日次気の触れたことを自覚させた。 この日常に平…

  • L・クロス

    L・クロスを磨くシモンと磨き終わるのを待つ伯爵。

  • 同席者

    伯爵とシモンは本の世界で再会を果たす。

  • c-s(CountとSimon)

    自慰を見られた伯爵と、彼を慰めるために自慰を見せるシモン。

  •  肌を掻く音で目が覚めた。隣を見ると鳴海が背中を掻いていた。かゆいところに手が届いていないようで、何度も身をよじっては爪に全神経を集中させて骨張った手のひらを小刻みに動かしている。ぼんやりとその光景を見守っていたライドウは手を伸ばし、かゆい…

  • 瓶詰めフロッグ

     ふたの開いたガラス瓶がある。 ライドウの机に転がるそれは中身がなく、内部と口の部分にべとべとした黄色い粘液がこびりついていた。異臭はしないものの、見た目は大変汚らしい。 ベッドで頭を抱えているライドウは応接室の声に気がつかなかった。 ノッ…

  • 桜雨(ライ×伽耶)

     大道寺邸には誰もいない。騒がしい悪魔たちを退治したばかりだ。 役目を終えたライドウとゴウトは海松茶(みるちゃ)色の門構えを見上げた。『いずれこの屋敷の持ち主は帰ってくる。それまで我らが留守を預かろう』 ライドウは浮かない顔をしていた。どう…

  • Summer’s Day

     風が吹いた。いっさいの物音がしなくなった。 静けさに振り返ると夏空があった。 屋上で支えもなく立つ脚からは短い影が色濃く瞬き、揺らめいている。 書生は手に持つラムネに口をつけた。まなざしはきつく皺を結った。 干したばかりの洗濯物は風にうる…

  • prose(和室にて)

     1, 待ち合わせということもあった。 黒い車体を鏡代わりにして、男は、くせっ毛にしてはよく整えられた焦げ茶色の髪に手ぐしを入れた。 口笛を吹きそうな明るい表情だ。 白のダービーハットをかぶり直し、彼は再び歩き出した。 男の行く先の逆方向へ…

  • 濃緑と橙 ~The March Hare~

     耳をみかんの皮でこしらえた雪うさぎがいた。目は黄緑のヘタを押し込まれて、まるでまつげが生えているようにぱちりとしていた。 窓台にぽつんと置かれて寂しげに月夜に背を向けているその隣に、もう一羽の雪うさぎが並べられた。こちらは南天で濃緑(こみ…

  • 部屋とYシャツと私

     探偵社に帰ってからまず目で探すのが鳴海の姿なのだが、その日、扉の前から見下ろすも所長デスクに茶色い頭はなく、ライドウは視線を流し場のほうへ向けた。物音は聞こえてこなかった。手洗いだろうか、そう思って階段を降りようとしたとき、背後から扉を開…

  • 雨月に惑う

     昨夜、碗に映る月をつかまえたばかりだ。 まるで今しがた掬ったように、水を一杯に張った茶碗を、僕は両手に掲げ持っていた。胸元に水を受けながら、星と位置とを伺う僕の頭は、うろうろとさまよう足と一緒に、手元へ月へとよく動いた。 やがてぴたりと見…

  • しゃぼんだま

     ストローからぷっくらと、生まれたてのしずくを垂らして、虹色のまんまるい泡が浮かぶ。 頭でたとえるなら赤ん坊のような大きさで、実でたとえるなら梨ほどのシャボン玉だ。 物言わぬきつねは、いつもよりも目をまんまるくしてふわふわと浮かぶそれをぱち…

  • 弥生

     昨日までは雪だった。 一緒に歩いていたつもりが、ふと見ると隣に立ち上るはずの白煙がない。探すまでもなく振り向くと、俺から10歩うしろにライドウの姿があった。 うつむきながらの一歩一歩はどこか慎重で、なにをしているのかと見ていると、遅い歩み…

  • まめまき

    「それでは鳴海さん、失礼いたします」「おう」 手には升。中には炒った大豆がしゃらしゃらと軽やかな音を立てていました。 鳴海の自室をノックしたライドウは、机に向かって帳簿づけをしていた男に一礼しました。 椅子をくるりと回転させて、鳴海も『どん…

  • 冬温し

     とほうもなくあたたかいなにかが指に触れた。 鳴海の腕だった。 寝返りを打ったところに彼がいた。 昨夜の情交のあと、そのまま眠ってしまったらしい。「あたたかい」 呆としながらも冴えた目つきだ。 気づきを含めた呟きを落とすと、鳴海の肩が、もぞ…

  • 水茎の跡

     外は雪。 元旦の探偵社はストーブがきいていて窓が曇るほどに暖かい。 午前8時。『お年玉』と書かれた大入り袋をまじまじと見てライドウは首をかしげた。 鳴海から手渡されたものだが意味がよくわかっていないらしい。 にこにこから一転、「あー、つま…

  • におい

    「なんですか、犬みたいに」「お前の後れ毛と耳の間の部分な、いい匂いがするんだよ」「くすぐったいからやめてください。 おまけに、なんですか、その鼻の冷たさは」 指先で軽くつままれた。 痛みもなくじんわりと鼻先をあたためてくれる優しい指だ。「体…

  • p.m.Check-in

     真鍮が黄金のように光っている。ポール付きベッドとは驚いたが、ライドウはそんな悪趣味な輝きを見ようともせずに、石なり塩なりを部屋の隅々に置き始めた。「なにしてるの」「こうしないと、これから部屋ですることを見られてしまいますから」「誰に?」「…

  • 蝶が見た夢

    「筑土町へ行くのですか」 壁に空いた穴から声が通った。 黒の学生服を着込んだ少年が白い壁面に身を寄せると、続いて水鏡のようにきらめく少女の声音が聞こえてきた。 月と兎、それに萩の絵を描いたら丁度良いだろう、小さな飾り皿のような大きさの穴から…

  • 新・今日の一コマ

     目の前には五つに切り分けられた羊羹。それと匂い香ばしいほうじ茶が二椀。 俺とライドウは向かい合って今日の茶受けを挟んでいる。 なぜ五つに切り分けるのだろう。 微妙なところで包丁さばきが下手な奴だと思いながら、俺はひとつ楊枝を刺した。 うん…

  • IN THE BEDROOM

     夢を見たと思う。 月明かりの下で影踏みをした。 遊び相手はひとりきり、川縁に長い脚を弾ませて僕の靴から逃げてゆく。 たんとんたんとんと影を踊らせるあの人は僕に捕まるまいと遠くの柳の下に身を移した。 天の川みたいにさやさや流れる木の葉の影が…

  • 太陽

    「覚えといて。辞書は上から三段目の列に入れること」 何事にも努力は必要だ。 相対する者がひとりきりなら歩み寄りも楽にいく。 ただ何をすればいいのか、何を望んでいるのか、表さなければ戸惑いが多くなる。 新しく国語辞典を買い求めた少年は二段目の…

  • MEMORIES

     遠めがねなんてものがどこにあったのか。 ふたつある。 星を見るのにちょうどよい長さだ。 肘から手首までの身の丈で、みっつの銅色の筒が星へ近づくほどに太くなって繋がっている。 覗き込む側はキセルより一回りほど太く、目のかたちにちょうどよい丸…

  • hole to the moon

     朝目覚めると、ベッド脇の床に穴があった。 もぐらが十匹くらい集まって同じところを掘った大きさだ。ジャックフロストの頭なら楽々入るだろう。 鳴海はぼんやりと穴の上に両足をぶらつかせながら考えた。 あぁ寝相が悪かったら大変なことだ。ベッドの上…

  • acorn(どんぐり)

    「鳴海さん、いいものをあげますよ」 正しいという顔が表す生真面目な口調で、ライドウはなにかを乗せた両手を差し出した。 ちり紙いっぱいに包まれたそれはacorn(どんぐり)だった。「遠慮なく喜んでいいですよ」 困った顔をする鳴海に向かい、少年…

  • This Is Love

     ミルク味のキャンディをコロコロと舐めていた。「はい、おみやげ」と、ある祝日の由来と共に鳴海からプレゼントされたものだ。 子供扱いをされるのが嫌だったのだろう。 だからといってルールも守らず、いたずらを仕掛けたあの日のやりようを肯定する気に…

  • 遣らずの雨

     石は見ていた。 横たわる泥水の中からたまたま意識を向けた方角に、ひとりの少年がいたのだ。 黒外套に学生帽、雨粒にも隠せない霧のような肌の白さと、これしかないという立体で顔どころか外套に隠されている身体をも形作られているであろう、ひとり佇む…

  •  ちょっと様子がおかしいなとは思っていた。大体2、3日前から。 まだ日差しも高い青空が窓から見える。時計の針は正午を指していた。 光に照らされた埃がきらめいているなか、僕はソファに座って本を読んでいた。 用事があってもすぐに本を閉じられるよ…

  • 机上にて

     10/5 ライドウ、元気でいるか? 俺は相変わらずだ。ここから、机の前から一歩も動けずにいる。いや、正確に言えば椅子の上から、だろうか。まったくどうしてこんなことになったのやら、万年筆をくるくる回してみても思い当たることが見つからない。 …

  • 続・今日の一コマ

     ケンカは些細なことなのだ。 理由があまりにばかばかしいので戯れに話してみようかと思う。 原因は石鹸だ。なくなりかけていた石鹸。 新しいのを出そうとしたら鳴海さんが先に出した。 前と変わらないのを。 だから僕は少しむかついたというそれだけの…

  • 8/1sunnyday

     夏休みのはじめ、定吉さんと会った。 先に見かけたのは僕のほうで、彼は異人の子を含めた晴海町の子供たちと鬼ごっこをして遊んでいた。白ワイシャツと麻のズボンという軽装を見るに、どうやら非番らしい。 しかし「さぁ次はおじちゃんが鬼だー」などと言…

  • 月の子

     どこと特筆することもないひなびた温泉街。空を見れば伊豆に近いのかも知れない。そんなくすんだ色をしている。 あせた畳の部屋にふたりはいた。 ここは旅館だ。少し湿っぽいが日が当たらないこともない、穏やかな明るさの中にふたりは寝ころんでいた。「…

  • ギフト

     朝に異変が起こるのはいつものこと。 ライドウがなかなか起きてこないので、鳴海は少年の自室をノックした。 扉を開けるとまず驚いた。 はじめは肩から、そして後ずさった腿へと大量の札束が雪崩れてきたのだ。ここから見えるはずのライドウの机が大小合…

  • 日常 晴海町にて

     潮の音が耳に心地よい。 白い石畳が眩しく照り合う町で彼と再び出会った。 彼は白桜のように毅然とした軍服を着たまま、胸元に茶色の紙袋を抱えていた。どうやら買い物帰りらしい。 ライドウは学帽の位置を正して会釈をした。彼も丁寧に挨拶を返した。 …

  • 日常 深川町にて

     鴉と共に深川を訪れた際、少年は昔のことを思い出した。その記憶を辿るように江戸から明治の町並みが残る家屋方面へと歩いていく。 立ち止まったのは見せ物小屋の前だった。不気味な呼び声でおぞましき非日常を見せようとする呼び子を無視して、少年はそこ…

  • やわらかな水

     疲れが出たのだろうか。 雨の日に歩いたというわけでもないのに少年は喉を痛めた。 喉の赤みは肺にまで達した。 曇りの日に彼は床に伏せた。 高熱で歩けない彼を診察した医師は寝室でぼそりと告げた。「軽い肺炎です」 どうぞお大事にと薬を置いて老医…

  • 水と体温

     ちゃぷちゃぷと歩くたびに音がする。 いつごろからか、互いの目には足元に水たまりができていた。 靴を浸すか浸さないかくらいのわずかな水は日を追うごとにかさが増していった。 今は夏。 足首まで水がある。「濡れてる感じある?」「いいえ」「そう。…

  • 格子

     朝に顔を合わせると、目の前に鉄格子ができていた。「おあ?」 鳴海は間の抜けた顔をしてデスク近くの黒い格子を指さした。 ライドウはライドウでぱっちりと着こなした学制服のまま飄然と立ちすくんでいる。 部屋の端から端まで10センチの間隔で黒い棒…

  • 今日の一コマ

     試験の疲れが出たのだろう。 堂々とソファの上で横になっているのはいたしかたない。 にしても寝ますな。お前は。 確かにカードキャッスルを作ってるくらいに暇だけれども。 おまけに静かだけれども。 寝ますな。 窓から差し込む陽に『ああ今は夕方な…