忘れじの詩(うた)・あとがき

 2012年6月のあとがき

 去年の9月頃(平成23年)から書き始めた作品がようやっと終わりを迎えたので、少々、この作品に取り組むことになった経歴などを書きたいと思います。

 きっかけはpixivで拝見した数々のファンアートでした。
 それまで悪魔城ドラキュラといえばシモンという陰気な青年が主人公という認識しかもっていなかったのですが(これは桜玉吉氏の『しあわせのかたち』にパロディキャラとして登場したシモンの印象が強かったのだと思います)なにげなくタグ検索をしてみたところ、これまでのキャラ認識を改めさせられる、すばらしい作品をたくさん拝見させて頂きました。
 荘厳なシモンさん、りりしいシモンさん、いかめしいシモンさん、かわいいシモンさん、etc、etc……。

 順序は逆ですが、ファンサイトをめぐるうちに、ゲーム自体にも興味をもつようになりました。演出やおもしろさについての熱い記事をたくさん拝見させて頂いたからです。それから過去作品を追い、プレイする日々がはじまりました。手にいれられる悪魔城作品を順々にクリアしたものの、いまだに触れることの叶っていない作品もあります。VKや64作品など。

 悪魔城シリーズをたくさんプレイさせて頂きましたが、興味の中心はやはりシモンさんにありました。
 プレイ動画での数々の愛あるコメントや、SFCの悪魔城ドラキュラでの、ラストの戦いにおける演出を思い出しては(伯爵様との対決で、体力を削っていくと、はじめに流れたシモンのテーマが挿入されるという、鳥肌ものの演出)実際にそのシーンをプレイして、何度も感動を確かめていました。

 そのうちに、私もシモンさんでなにかを書きたいという気になりました。といっても絵や漫画の制作は不得手なので、心に浮かんだ疑問や小説として昇華したいシーンなどを大切にメモして、それらに取り組む日々が続きました。
 シモンさんひとりでは話が書けないので、『もしも呪いをかけたのが伯爵様でなかったら』という設定で、悪魔城シリーズの顔であるあの方にご登場を願い……。
 反目しあう関係が互いに協力せざるをえない状況に身を置くという話がとても好きで、それを魔王と狩人で書けたらおもしろいだろうなと思いました。

 文中に何度も出てくる『竜公』という敬称ですが、もちろん史実とはなんの関係もなく書いておりますので、ヴラド三世の父親の名や、位、敬称(ドラクル)という意味ではなく、悪魔城シリーズでの伯爵様への畏怖の念をこめた、雰囲気的な敬称として使用しております。串刺公ツェペシュという敬称も、もちろん、おそろしく力強いのですが、それは苛烈な人生を生きた、ヴラド三世への人としての敬称と思いました。悪魔城シリーズの絶対的な顔である伯爵様には、それとは別に、なにか、超越的な存在をあらわす敬称が欲しかったのです。竜の息子であり、邪悪と恐怖の象徴、偉大なる竜そのものであるという印象を強めたかったので、あらゆる敬称のなかのひとつとして『竜公』という書き方を選びました。
 長々と書きましたが、つまり、簡単にいいますと、格好いいわ書きやすいわで、この敬称で統一したいなぁと、そんな理由です。

 異なる原作の設定をいろいろとまぜこんだ話なので、シモンさんの髪が茶から金に色が変わったとか、カーミラではなくカミーラというドラキュラ2規準の名前とか、妙なこだわりがたくさん詰まってしまいました。それもあたたかい目でスルーしていただけたらと思います。

 ともかく、悪魔城ファンの方々から(勝手に)影響を受けて書き始めたこの話、無事に終わってほっとしております。
 苦しすぎていやになることもありましたが、結局は楽しくて、大筋では、だいたい満足にいったなぁという気持ちになりました。

 まとまりのないあとがきを含めて、最後まで読んでくださった方や、目を通してくださった方へ、心からの感謝を申し上げます。
 本当にほんとうに、どうもありがとうございました。
 少しでも楽しんで頂けたら、とても嬉しく思います。

 12/06/24(日)

 入和夏結子
 iriwa nayuko

 文中のミハイ・エミネスクの詩の引用元
 『世界名詩集大成 15
 北欧・東欧 (平凡社)』所収