皆と一緒に新年のお祝いをしたいとの誘いを受けたシモンは、別世界の自分達とともに、古の城主の私室を訪れた。
扉を開けたシモンは一面に広がる真っ白な絨毯に目をみはった。やわらかな感触、くるぶしまで埋まる毛量。
「メリノウールだよ」
三人を歓迎した伯爵はシモンの頬に軽くキスをしながら説明した。
現実の世界では今年は未年といってな――自分達の戦いの記録をわかりやすいかたちで世に広めた極東の島国の風習を取り入れてみたんだと伯爵は語った。手始めに今年の縁起物である羊の品を――最高級の羊毛を床に敷き詰めたという。
「転生体が生まれ落ちた地でもあるし、今年は趣向を変えて、なにかと浅からぬ因縁がある国のやり方で新年を祝おうと思ってな――」
「とてもすばらしい発想だ」肌触りの良いものを好むシモンはさっそく床に膝をついて、そのふかふかの感触を楽しみながら伯爵を称賛した。手触りにすっかり夢中であまり話を聞いていないようでもあったが、伯爵はかまわず――その反応も計算の内であるかのように――説明を続けた。
「盛大にとはいかぬが、島国の風習に則って、まじめに、心を尽くして新しい年を祝いたい。そのためには君の協力が不可欠でな――ぜひとも力を貸してもらいたいのだ」
伯爵は青年のもとに膝をつき、すんと鼻を動かして、清潔な髪の香りに目を細めた。招待状に書いたとおりに、新年を祝うためという文面をなにも疑うことなく、青年は身を清めてきたのだ。いとおしさにはやる心を抑えようと、伯爵はシモンの肩を抱き、別世界の自分達ふたりに目配せをした。
「さぁもっとあたたかいところへ――」
暖炉の火がきいた部屋の中心へと導いた伯爵は、楽な格好になるよう青年をうながした。武具を解くシモンに「もっと」と、自身はゆったりとした椅子に腰掛けながら、彼は脱衣を命じた。シモンの目が丸くなる。
「誤解してはいけないよ」ともうひとりの伯爵がやわらかい声でシモンをなだめた。「これからする様々な行事を執り行うためには衣服は邪魔なものでしかないんだ。寒くはないだろう? 羊毛の感触も直に肌で味わえる。とても心地よく、ぬくもりに満ちた肌触りだと思うよ」
そうそうと、もうひとりのシモン――赤髪の青年がにこやかに話を続けた。
「大勢の前で脱げと言っているわけじゃない。ここには俺たちしかいないんだから、なにも恥ずかしいことはないだろう?」
「なぜ私だけ」とまどうシモンに伯爵は穏やかな声音で笑いかけた。その微笑は、こわいことなどなにもないのだよと、誰もを安心させるような魅力に満ちていた。
「君を中心にして祝い事をするからね。新しき年に身を捧げて皆の幸福を願う行事なんだ。君の協力があれば後進の狩人たちも良き一年を過ごせると思うのだが――」
そう言って伯爵はシモンを見つめた。
後進のため、子孫たちのため――そう言われるのは弱かった。
実際に効果があるのかなど二の次だ。良き年を迎えるために心を尽くして祝いたいと表明されたら、抵抗する意味などない。少し恥ずかしいだけだろう。
シモンは上衣とブーツを脱ぎ、そろそろと下穿きに手をかけた。
皆のほほえみが深いものに変わる。
生まれたままの姿となった青年を、皆は自身の一員となったように喜んで迎え入れた。
「相変わらず美しい体だ」
伯爵は惚れ惚れとしたように青年を見つめた。
骨格から均整の取れた無駄のない肉付きと、戦いのために育まれたたくましい身体は、厳粛な美とともに、見るものの目を楽しませるような無自覚ないやらしさがあった。堂々としながらも、シモンの表情は抱きしめたくなるほどに純粋で、まなざしには誠実さがあり、朱に染まった頬には静かに結ぶ唇とともに清らかな恥じらいを見せていた。
伯爵は小箱から数本の筆を取り出した。それをほかのふたりに渡し、なめらかな毛先の感触を指で確かめる。納得したように息を抜くと、とまどうシモンに振り向き、こう説明した。
「書き初めと言ってな。年が明けて初めて筆墨を用いてめでたい詩歌を書く行事のことをそう呼ぶんだ。元は字の上達を願ってのことだったらしいが、次第にめでたい詩歌を書くことで魔や穢れを祓い、一年の幸福を祈って
途中からまったくでたらめの行事内容を口にした伯爵に罪悪感はこれっぽっちもなかった。
むしろ自分の言っている内容こそが真実で、書き初めの本来の意味がこめられているのではないかと、自身の創造性を誇るようなまなざしをたたえていた。
そしてシモンは疑うこともなくうなずいて、唾を飲み込んだ。その筆で自分の肌に言祝ぎを書き記すのだと理解したのだ。
伯爵は飲み込みの早い友の表情に満足しながら「しかし筆墨は用いない。君の美しい肌を墨で汚すなど耐えられることではないからな。儀式は空墨でも良く、言祝ぎの文字を簡略化してもかまわないそうだ」と嘘八百を語り、さっそく肌に筆をすべらせた。「あっ」思わず声が出たシモンを喜ばしいように見つめ、伯爵はふたりに目配せした。心得たように筆をかまえる。
怯えたまなざしになったシモンの緊張をやわらげるように、ふたりはほほえみを深くして、容赦なく筆を走らせた。
「あぁっ、あぁっ」
筆は子細に神経を刺激する。三方から予想もつかない動きで肌をなぞられたシモンは、思わず身をかばうように体をくねらせた。
「動いてはいけないよ、シモン。文字が書けないじゃないか」
すまない、と謝罪したが、毛先を立てるようにあちこちに筆を走らされたシモンは、びくつき、硬直する体をどうにもできなかった。
伯爵は心地よい音を立てて指をはじいた。
とたんに両腕を高く持ち上げられ、吊すかたちで拘束される木製の機具が現れ、シモンを縛り付けた。
「あぁ、いや、いやだ」
衝撃と恐怖に思わず弱音を吐いてしまった。
蔑むような目線を受けてシモンは唇を引き結んだ。
恥じらい、後悔し、耐えるような表情になったところで、三人はやさしいほほえみを向けて、シモンへの責めを再開した。
耳の裏を、頬肉を筆が走る。
首筋に、無防備な腋の下になんの意味もなさない文字を書かれる。
膀胱が刺激されるようなその感触にシモンはただただ身悶えた。
見えない小人が肌の上でパ・ド・ドゥを踊っているようなその繊細かつ愛のある動きに翻弄された。
膝立ちでいる下肢はすっぽりと極上のウールに包まれて、緊張から生まれる汗を吸収し、熱に変える。
乳首が円を描くようにさわさわとなぞられた。
「あぁっ!」
すぐに硬くなる鳶色の乳首。左右それぞれが違うスピードで刺激される。
腕をこわばらせ、腰をくねらせて、シモンは必死に尿意に耐えた。
ふふと笑い、伯爵は魔法で青年の股間の下に空の花瓶を用意した。
意味するところを察して、シモンは唇を引き結んだ。
きっと睨むそのまなざしに誤解を解くように伯爵は笑いかけた。
「我慢しなくていいんだよ。肌に文字を書かれる者は司祭であれ神官であれ皆ひとしくそんな反応をもよおすんだ。聖者である君も同じこと。文献にもこのように用意すべしと書かれてあった」
「そんな、こと、」
「儀式の最中にこぼされるものだ。聖なる滴であるだろうよ」
耳にふっと息を吹きかけられた。乳首への責めはやまない。
いやらしく、ねちっこく、ふるえる腿を笑うように敏感な部位が刺激される。
シモンは顔をそむけて、目をつむった。
筆は一本でなく、両手に増えて、異なるところをすべっていく。
乳首は執拗に責められ続けて、強弱をつけて筆の腹でこねられたり、先端でつつかれたりした。
涙を無視するように、脇腹を、腹筋を、なめらかな筆が這う。
「あぁっ、いやっ、もう……やめてくれ……」
くねり、よじり、シモンは懇願した。
三人のほほえみは変わらない。
恥ずかしがらなくていいよというふうに、やさしく、愛をこめて、青年の肌をくすぐった。
「楽になりたまえ」
背筋にすっとすべる筆。
「あっ……」シモンの目が見開かれた。
はじめに、小さな滴が垂れた。
あわてて自分から花瓶の位置に狙いを定めて、シモンは残りの滴を小刻みに放出した。
底に当たるまで距離があり、そのぶんを音高く鳴らせて、じょっ、じょっと、耳を塞ぎたくなるような放尿音を部屋の中心に響かせた。
器に弾かれ、底のほうで跳ねる音がなんとも卑猥だった。
震える肌、赤みを通り越してどこか冷たくなったように感じられる頬。
まなざしは見開きから徐々に潤み、可憐に震えながら、突きだした腰を呆と見つめるものに変わっていった。
最後のほうをほんの少しこぼしながら、シモンはすべてを出し切った。
それを褒められるように、そむけた顔に三人からのキスが降りた。
「よくがんばったね」「立派にやり遂げたよ」「君はえらい子だ」
幼い子をあやす言葉で称賛されながら、シモンは濡れた布で陰茎を清められた。
これで終わりなんだ――そう思った彼に「さぁ、次の儀式だ」と伯爵が声をかけた。
もうすでに散々に疲弊した身にはあまりに容赦のない言葉だった。
機具の拘束を解かれるとシモンはぺったりと腰を下ろした。
そして肩を落としてうつむいてしまった。
はっとしたように三人が様子を見た。
やがてもうひとりのシモンがその肩を後ろから抱いて、さすりながら、企画者である伯爵をにらみ「だめじゃないか、休ませなきゃ」と意地悪く責め立てた。
伯爵はむぅと口をつぐんだ。
彼流の立ち回り方を知っているもうひとりの伯爵は即座に青年の身にまわった。「そうだぞ」と言いながらシモンの頭をなでる。
これで悪いのは伯爵ひとりになった。
ずるさに気づきながらも何も言えなくなった伯爵は、どうしていいかわからない気持ちで、シモンの様子を伺っていた。
ぼそっとした声でシモンが言葉を落とした。「水をくれ」
「ほら、水」と赤髪のシモンが持ってくるように伯爵を促した。
そして早くそれを片付けるよう花瓶を持って行かせた。
なにも腑に落ちないながらも言うとおりにする伯爵の背を、もうひとりの伯爵が同情のまなざしで見つめていた。
水差しとコップを持って帰ってくると、別世界の自分達はシモンの背を後ろから抱き、もうひとりは内腿をさすりながら、気を取り直したシモンといちゃいちゃしていた。
見せびらかすようなキスを何度も交わして、「あいつはえばりんぼでひどい奴だね」「高圧的に過ぎるな」とかなんとか言い、それを受けてシモンは「そうでもないよ。いいところはいっぱいあるよ」とかなんとか言っていた。
ふたりに甘やかされているシモンを顎にしわが寄るような気持ちで見つめながら、伯爵は黙ってコップの水を手渡した。
「ありがとう」
シモンはごくごくと水を飲み干した。
どうやら青年の気分に問題はないらしい。
ふたりはなんだかんだでシモンをなだめることに成功したのだ。
気持ちを切り替えることにして、伯爵は指をはじいた。つややかな光を生む白ワインのボトルが現れた。
「竿酒――きのこ酒とも言うがな。五穀豊穣と一年の健康を願って、選ばれしものの股間に酒を注ぎ、それを飲むという伝統的な遊び――いや、儀式があるのだ。生命をはらむ部位に百薬の長であるワインを注げば効能は百倍にも千倍にもいや増し、飲んだものに祝福と長寿を与えるだろう。酒を受ける側が貴き血と身分を持つものなら効果は確実と言っていい」
遊び以外はすべてでたらめの行事内容を滔々と語り、伯爵はシモンの合意を得ようとした。
恥ずかしい内容にシモンの頬は染まり、ためらう仕草を見せた。
しかし逃れらない空気を察したか、シモンは「股間に酒を注ぐって、どうやって」としぶしぶ聞いた。
伯爵は待ち望んでいたように懇切丁寧に説明した。
「両膝をついて。太腿をそろえて、少し膝を立てるんだ。倒れないように後ろに手をついて――そう、それでいい。くぼみができるだろう? 股間のスペースにワインを注ぐんだ。わたしたちは左右からそれを飲むからね。動かないように――こぼしてはいけないよ」
書き初め(筆責め)に続き、第二の身を捧ぐ姿勢が取られた。
酒を受ける盃となるポーズを取り、シモンは顔をそむけ、そのたくましい腿をぴっちりと閉じた。
三人はその清らかなるも淫靡な肢体にごくりと喉を鳴らした。
なんと犠牲と被虐に満ちた美やかな姿勢だろう。すばらしい遊びだろう。
はやる気持ちを抑えて、伯爵は聖なる三角に酒を注いだ。
粘膜からしみて、熱を帯びるようなねっとりとした感覚にシモンは目をつむった。とくとくと注がれる、あふれるような肌への刺激と、甘い酒の匂いを感じていた。
注ぎ終わったそれを見つめた三人はふたたびごくりと喉を鳴らした。
黄味の帯びた水面にゆらゆらとのぞく立派な逸物。
豊潤な精気が酒に満ちるようだった。
呆としていたふたりに先んじて、赤髪を手で押さえながら、シモンが横から盃に口をつけた。
股間へと頭が寄る感触に青年の肌がびくつく。
静かに酒を飲み込むひめやかな空気に、もうひとりの伯爵がたまらず横から口をつけた。
くすぐったさにシモンの顔がのけぞった。
耐える表情と、ぷっくりと膨れる乳首を見て、伯爵は最後に残された位置へと顔を寄せた。
青年の生命をはらむ部位ごと愛するように、正面から酒を飲み込む。
品良くもいやらしくすすられるその感触に、シモンはたまらず「あぁ」と濡れた声を上げた。
限られた幅の狭い空間に三人の頭が寄っているのだ。額や鼻を突き合わせて、おかしな熱を共有している。
(はたから見れば自分よりもきっと彼らのほうが恥ずかしい姿をしているのだろうな――)
そんなことを思いながら、すべてを受け入れるように、愛するように、シモンは股間に集まる彼らの頭を見つめていた。
酒はすぐになくなった。
「もう一杯」と誰かが言い、誰かが当然のようにそれに応えた。
ボトルをつかみ、どくどくと注ぐ。
呆然とするシモンをよそに、ふたたび頭を合わせて、三人はこの世のものとも思えない甘露を味わった。
まるで小動物が乳にむしゃぶりつくようなその姿を見て、シモンは呆れから徐々に母性にも似た感情を覚えるようになった。
ボトルがなくなるまでのあいだだ。好きなだけ飲むといい――くすぐったさに耐えながら、シモンは横に顔をそむけた。
恥じらいはあるが、これで健康になれると思えるならそれでいい。
純粋なシモンはいまだにこれは遊びではなく(変わってはいるが)神聖な儀式だと信じていた。
何度も酒を注がれて、ボトルが空になったのを見届けたあと、シモンはほっと息をついた。
やっと終わる――そう思ったのもつかの間、股間の酒がきれいになくなる頃、三方から同時に陰茎へ吸い付かれた。
ひぃ、と思わず声が出た。
ちゅうちゅう、ちゅぱちゅぱと、遠慮会釈なしにむしゃぶりつかれ、シモンは両腕を震わせた。
「も、もう酒はないだろう。そんなところ、吸い付くな」
抗議の声に伯爵は顔を上げた。
血走った目を向けて「これが最後の儀式だ」と、酒を吸いにくい位置になったことを恨むような声でそう言った。
「姫始めと言ってな。年明けに初めて行う性行為のことをそう呼ぶんだ。愛を誓い、健康にまぐわえることを願って一心に愛し合うんだよ」
でたらめな儀式を考えるのも億劫になったらしい。
「お前、まぐわうって」というシモンのつっこみを無視して、伯爵は邪魔になった服を脱ぎ捨てた。ふたりもあとに続き裸になる。
「実に美味だったぞ。さぁお次は永遠の愛を願って君を味わうとしようか」
脚を開かされ、ふかふかの羊毛へと体を倒されたシモンは、とまどう間もなく順々に三人の陰茎を味わわされた。
口にねじこまれ、手でしごくよう強要され――どこかでこうなることをわかっていたシモンは、抵抗もそこそこに、やがて従順に三人の想いに応えるようになった。
口に、髪に、顔にほとばしる濃密な精子。
アルコールの香りにまじる独特の匂い。
一度彼らの熱を受け止めたシモンは、とろんとした目のまま、なにかを確かめるように身をよじった。
あたたかな羊毛、ふかふかの、心地よい、気持ちいい感触。快美な電流が走るような全身へのたえまない刺激。
(羊の群れと裸で戯れているようだ――)
背中から伝わるなめらかな肌触りにシモンは自身の官能の扉を開かされた。
遊ぶように二本の陰茎で乳首をくりくりと刺激され、シモンはふふっと笑った。
たまらないようにひとりの陰茎を口に含み、ちゅぱちゅぱと愛を返す。
酒の匂いで酔っぱらったかのような、ふだんの彼では考えられない明るい淫らさだった。
いまだに達していないその身に気づいたように、ふたりがかりで男根を刺激され、シモンは今年初めての熟した精を放った。
三人はそれをいとおしむように指にすくい、舐め取り、シモンにキスの雨を降らせた。
「お尻を上げてごらん」
もじ、とシモンはためらいがあるように身をくねらせた。
酔ってはいてもまだどこかに理性が残っているのだろう。それもいとおしい反応だった。
「いい子だから」
伯爵が青年の尻えくぼにキスをして促すと、シモンはおずおずと体を差し出した。
「自分で開くんだよ」
むっちりとした大きな尻たぶに両手をくいこませて、シモンは秘部を皆の前にさらした。じんじんと脈打つ緋色のすぼまりが恥ずかしげな動きを見せた。
くすくすと笑う声に頬が染まる。
シモンはふかふかの羊毛に顔を埋めてそれに耐えた。
刺激を与えるように高い位置から潤滑剤が垂らされると、その冷たさに体がびくついた。
三本の指で液体を押し入れられながら、さらに垂らされ、潤滑剤を注がれる。
震えを帯びる青年の肌をたまらない気持ちで眺めながら、三人はこぷこぷと音を立てる彼の尻穴を充分にほぐした。
ここからどろりとした愛の証を吐き出すまで皆でたっぷりと可愛がってあげよう。三人の思いはひとつだった。
朦朧とした表情のシモンを起こすと、皆は彼を祝福する気持ちでキスを交わした。
震える彼の内腿へと音もなく潤滑剤がこぼれていく。
かわいいね、かわいいねシモンと、彼らはささやき、肌をさすった。
ひとりの上に腰を下ろすように言われ、シモンはなにも考えずに言うとおりにした。
苦もなくするんと肉棒が入った。
うつぶせにされて、唾液を交換するようなねっとりとしたキスを交わす最中に、もうひとりが背中に覆い被さった。
あ、と思う間もなく、二本目の男茎がシモンの内に入った。
身を倒したことによって生まれるほんのわずかな隙間に誰かの熱情が入り込んだのだ。
息が止まるような圧迫感にシモンは自然と涙をこぼした。
「あ、いや、いや――」
こわい。ふたりいっぺんになんて、尻がどうにかなってしまう。
「シモン、みんな君と繋がりたいんだよ。これも儀式と思って、受け入れておくれ」
「だって、だって」子供のように泣きじゃくるシモンに背後からキスを落とし、もうひとりの伯爵は「あぁ、とてもあたたかいよ、シモン」と愛をささやいた。
抱きしめられながら耳に告げられる愛の言葉に、シモンは潤んだ瞳を開けた。
眼前に腰が寄っている。もうひとりのシモンの立派な逸物が迫っていた。
「口を開けて」やさしい声音だった。「苦しくなったらすぐに外してあげるから」
できるよね、シモン? と笑みを向けられながら顎をつかまれた。
震える唇を亀頭でなぞられて、シモンはどうしていいのかわからずに目をとじた。
口の中に陰茎がゆっくりと押し込まれる。
口腔いっぱいに広がる雄の味を感じながら、シモンは懸命に鼻呼吸をした。
ひとりが動く。舌の愛撫を期待するように腰が迫る。
尻や太腿をもまれて、途方もない快楽の中、シモンはすべてを皆にゆだねた。
背後から胸をもまれている。前から乳首を吸われている。
頭をなでられ、耳をなぞられ、シモンは幸せだった。
時々、おもらしをした。潮を吹いた。
気にとめないように皆はシモンを責めた。
たっぷりと注がれた精液を腹の中であたためながら、シモンは代わる代わるに突き入れられる彼らの熱情を一心に愛した。
舌を絡ませるキス。くまなく舐められる肌。
腋の下に吸い付かれると泣き声が漏れた。
「どこを舐めてほしいの?」と尋ねられ、シモンは泣きながら腰をくねらせた。さみしいように揺れる陰茎。
「ちゃんと口で言えないのかね?」ぶるぶると頭を振るシモンを彼らは「しかたのない子だね」と甘やかした。そして舐めてほしいところを三人がかりで責めた。
まるで全身がおしゃぶりになったような気持ちでシモンは果てた。ところがついばみはやまない。
「あ、いや、もう、やめて、やだ、やだ、やだ……っ!」
時々彼らはこんなふうにしてシモンをいじめた。
それもどこかで快く感じているようにシモンはいやいやと泣き叫んだ。
ぐったりとする身を無理に起こして、尻を上げさせて、誰かが突き入れる。
ほかのふたりはワインや水を飲みながらおもしろいようにその様子を見ていた。
ひぃひぃと泣き、手応えのないふんわりとした床をつかみながら、シモンは苦痛には思われない極上の快楽を受け止めていた。
「位置を変えて、また三人一斉に彼の中に入ろう」
「最低でも三巡はしないとな」
「きちんと水を飲ませないと。彼のおもらしは縁起物のようなものなんだから」
びくびくと打ち震える瞳で彼ら三人のそんな話し声を聞きながら、シモンは喉が渇いたように唾を飲み込んだ。
水ならいくらでも飲めるような気がする。
恥ずかしいけれど、見られて、喜ばれるのはなんだか嬉しい。
あぁ、自分はいったいどうしてしまったんだろう。あの三人になら、なにをされてもいい。だって本当にいやなことはされないのだから――。
「ほら、シモン、起きて」
もうひとりのシモンが青年の身を起こした。
朦朧とするシモンを支えて、彼はほほえみながら青年の肌に胸を合わせた。
位置を調節するように視線を下げる。
乳首同士が触れるとシモンは小さく息を飲み込んだ。
鳶色の若い肉茎が挨拶をするようにくにゃりとつぶれ、ぴんとはじかれる。
もうひとりの自分があやしげな動きをすると、また乳首同士が触れ合って、こすれて、小さな快感とともにはじかれた。
「あぁっ あぁっ」
ふたりは見つめ合い、何度も何度も、甘く戯れるようなキスをした。
切なさの混じる快感に夢中になり、やがてはシモンのほうから体を動かし、自分自身の乳首を探した。
触れると喜びに満たされて、背中や腰を抱く手に熱がこもった。
肌をさする手はするするとお互いの股間に伸び、交差していた陰茎をやさしく包み込んだ。
舌を絡ませ、乳首をこすり、尻をもみながらお互いの陰茎を丁寧にしごく。
その姿はみだらで、鏡に映る自身を愛しているような倒錯感があった。
ふたりの伯爵は最高の舞台を眺めるように、彼らのはしたない遊戯を楽しんでいた。
終わりのない遊びに興奮を煽られた彼らは、ふたりのシモンの尻間に陰茎をあてがった。
そのまま突き入れるのかと思いきや、すりすりと尻間の感触を楽しむように、青年たちの肌で自身の陰茎をしごきつづけた。
もうひとりのシモンが城主たちのいたずらにくすっと笑う。
赤髪の青年は愛し慣れた伯爵のほうを振り向き、尻を軽く突き出して「ほら」と[[rb:熟 > こな]]れたふうに彼を誘った。
心得たようにもうひとりの伯爵は青年の内に熱を押し入れた。
震える息をこぼしながら、彼は自分自身の頬を抱いて、「シモン、お前もきちんとおねだりしなきゃ」と諭すようなキスをした。
青年の尻はいまだ自由で、おあずけを食らっている状態だった。
肛門に触れたかと思いきや、するんと外れて、尻間をこすられるという、こそばゆい感触を味わわされた。
振り向いて、見つめても、伯爵は意地悪くほほえむばかりで突き入れてはくれない。
赤らんだ頬でシモンは「……早く」と愛をねだった。
そんな頼み方では足りないというように伯爵はふっと笑った。
シモンは精一杯考えて、尻をぐっと突き出し、瞳も声も震わせて「お願いだ」と伯爵を見つめた。「お前のが欲しい。ぐちゃぐちゃに、かきまわしてくれ」
燃え上がらないわけがない。ほかのふたりが軽く嫉妬するような頼み方だった。
勢いよく突き入れられ、「あぁ」とあえぐシモンに、もうひとりのシモンは頬を染めながら無理やりキスをした。自分のほうに振り向かせたい一心だった。
口づけを交わす最中に「あふ」と赤髪のシモンがのけぞった。
尻を責めているもうひとりの伯爵が、シモンの言葉に煽られたのか、愛しい青年を熱烈に求めだしたのだ。
豊かな胸をもみしだき、彼の一番快いところへ的確に腰を叩きつける。
美しい体をかき抱きながら、ずんともぐり、小刻みに突いて、こねまわしては腰を引き、ふたたび深くつらぬいてゆく。
それらはとても速く、リズミカルで。
赤髪の青年は動揺したように後ろを振り向き、涙声で懇願した。
「あ、あ、そんな、激しく、だめ、待っ、て」
「あんっ、あんっ、ヴラド、もっと、もっと、おねが、い」
向かい合って交尾する二対の大型の獣のように城主と狩人は激しく求め合った。
青年同士は潤んだ瞳で見つめ合い、情熱に翻弄される自身を慰め、励ますように熱い舌を絡ませた。いやらしい味がした。
腿や尻を叩かれてはふたりは欲望を煽る泣き声を上げた。
仲良く触れ合わせていた乳首をつねられ、こねあげられて、ふたりは囚われた身を悶えさせた。
快楽に負けないようにキスを交わして、先に城主が果てるのを待ったのだ。
しかし魔王が与える肉の悦びは青年ふたりの心を淫靡な抱擁で絡め取り――
「あぁあ!」
「あぁーっ!」
屈服した彼らは、同時に精を放った。
やがて腹に注がれる白い熱情。
まがいの陵辱に浸った身を心地よく感じながら、ふたりは倒れ込み――見つめ合うと、瞳をやわらかく細めた。
ひくひくと脈打つ体を横たえて、ふたりの青年はお互いの手を握りしめた。
離れることはないように顔を寄せて、甘く可憐なキスをする。
あぁ彼も愛される側になったのだ――そう思ったシモンが、彼の美しい目の光を見た。
獲物を狙うような、小休憩からの心の切り替え。
赤髪の青年は若々しい力をこめて彼の頭を抱いた。
小鳥のキスから一転して噛みつくような口づけを交わし、彼はシモンの体を仰向けにさせた。
脚を開かせ、すべてを暴く力で膝の裏を抱え上げる。
そしてほほえみながら青年の肛門に陰茎をあてがい「ねだってごらん、シモン」と獣のような鋭さで自身を見下ろすのだった。
代わる代わるに求められ、欲望を注がれて――
尻間からこぷこぷとあふれ出る愛の証を見て、ひとりが「おやいけない」と青年に覆い被さった。
そして栓をするように逸物を突き入れた。
あぁ、とシモンはあえいだ。
ぐちゅぐちゅと動かされる感触にシモンは肌を粟立たせながらこう尋ねた。
「いつ、出していいんだ」
キスをしながら伯爵は答えた。
「もうちょっとだよ。もうちょっとしたらね。その時はうんと気持ち良くなれるからね。愛しているよ、シモン」
くすくすとほほえみながら残るふたりが愛撫に加わった。
水を口移しで飲ませて、一斉に繋がる愛技を繰り重ね、本人も恥じらいのなか悦楽に包まれるおもらしを皆で見守り――そして夜は更けていく。
壁紙に映る映像を四人で見ていた。
ベッドの中でお互いの髪を梳きながら、悪魔城のとある世界で、子孫や後進たちが今まで目にしたこともない装備品を金色に輝く宝箱から手に入れる映像を。
「君のがんばりがあってこそだ」
大きな怪我もなく戦いを記録する狩人たちの姿を見てもうひとりの伯爵も呟く。「今年も健康に過ごせることは間違いないな」
「病気ひとつしないだろうさ」もうひとりのシモンが肉を頬ばる後進たちを見てほほえむ。「食料も豊富にあるだろうし」
愛も誓えたしと、青年の頬にキスをする。そして彼は楽しげにこう言った。「もう一度見てみたいな」
「いやだ」とシモンは伯爵の首根っこにすがり懇願した。
その反応を可愛がるように、「そうだな、あれは何度見ても良いものだ。彼はすばらしく愛らしかったからな」と意地悪く指先から魔法を飛ばした。
壁紙に映る映像が切り替わる。
そこには愛し合う四人の姿が映っていた。
腹にたまった精液のせいで、苦痛が快感を上回って、どうにもできなくなったシモンを、三人がいとおしげにキスしていた。
無声の映像は淡々と続いていく。
なにかをささやく伯爵と、目を見開くシモン。
頭を振って懇願するも当然のように聞き入れられず、青年は脚を開かされ、そのまま仰向けに体を倒された。
両膝が肩につくまでひっくり返されて、尻も睾丸も丸出しになった。
たらたらと汁があふれ、ひくつく肛門。
ときおりぴゅっ、ぴゅっ、と白い液体が噴き出して――耐えきれなくなったシモンは、やがて勢いよく肛門から精液を噴出した。
胸や顔にかかるあたたかい愛の証。
白い熱情は彼を汚し、震える身から透明な小水をあふれさせた。
三人の想いに翻弄されながらも、確かな快感に浸っている証拠だった。
(おめでとう)(おめでとう)(おめでとう)
無音のお祝いと拍手が快楽に震える彼を甘い幸せで包んでいく。
気が狂いそうになる呆然とした心地と、やわらかな陶酔とが入り交じった濡れた瞳は、やがて長い儀式を終えた疲れにより、ゆっくりと閉じられていく――……。
映像が終わる頃には全員がしんとしていた。
シモンが枕に顔を埋めて殻に閉じこもるように無言でいたのだ。
調子に乗って「実はこれには音声付きバージョンもあって」などと話そうとした矢先に、愛が冷え固まった反応を取られたものだから、皆は慌てに慌てた。
いつも通り責任のなすりつけあいになるのかと思いきや――
「すまない、シモン」「やり過ぎたよ」「いやなら、この映像は消すから」
口々に心からの謝罪を向けられて、シモンは鼻をすすりながら、困ったように眉を下げてしまった。
じわりと胸に広がるあたたかさ。
あぁ、愛されている。
「……少し休んだら、皆と一緒に探索に加わろうと思って。彼らばかりに戦わせているのに気づいて、申し訳なくて、落ち込んでいたんだ。みんなのことは怒っていないよ」
「君は君で大事なことをしていたんだよ」
悲しい顔をする伯爵の首筋にシモンは抱きついた。「うん。わかってる」
妙な儀式には違いなかったが、愛を育むのも重要な行為で、そのためのきっかけが生まれるのならすべては良い風習に思われた。
古の悪魔城も今は平穏なことだろう。青年が魔王をおとなしくさせているのは事実だし、後進たちもきっとそれをわかっている。彼らはひとときの安らぎを贈るつもりで青年を探索に誘わなかったのだ。
やさしい子孫たちに感謝しながらシモンは魔王の首に頬ずりをした。
「もうちょっと一緒にいてもいいだろう?」赤髪の青年が寂しそうに言った。
シモンは彼の首筋にも抱きついてこう言った。「あぁ。一緒に肉を食べよう」
「探索もかまわないが、今はゆっくりと休むんだよ」
シモンは腕を伸ばしてもうひとりの伯爵の頬をなでた。「ありがとう。みんなで良い夢を見よう」
「良い夢といえば」
伯爵はひらめいたように手のひらを縦に広げた。
「縁起の良い初夢を見る方法というのがあってだな。それは皆で心から愛し合うのが一番なんだ。悪い夢を見たとしても清める意味合いで皆と熱を分け与えれば穢れは祓われ、今年一年の幸福が約束されるというぞ」
「それは良いことを聞いた。わたしは夢見が悪いからな、皆の力が必要になるかもしれん」
「良い夢を見るためにも、もちろん協力してくれるよな、シモン?」
抱きつかれ、キスをされて、シモンは困りきったように眉を下げた。
どうでも自分を放すつもりがないらしい。
もう眠りたいと思いながらも、求められる気持ちよさに心とろけて、シモンはあたたかな色のハートマークを込めながら、皆にキスを返すのだった。
終
15/01/06(火)
初春っぽいものをと考え、でたらめな伝統行事をめいっぱい盛り込みました。
ぐだぐだ感は過去最高かもしれません。
目がハートマークになるくらいに愛されるシモンさんを書きたかったので、これはこれで満足です。