ドラシモ

忘れじの詩(うた)・7

 秋の夕照が瞳を穿つような厳しい時間に、当然のことながらふたり一緒に山を下りた。要塞の外は空気が冷たく、乾燥していた。町へ着くころには夜になるだろう。用事を済ませ、ふたたび帰り着くころには山間から朝蔭(あさかげ)が覗くのではないか。急とはい…

忘れじの詩(うた)・6

 寝室にて、シモンが昼寝から目覚めると、午後の陽気に照らされた机の上に、食堂にあった一輪挿しが置かれていた。摘んだばかりのような真新しいエーデルワイスがその白い花弁の影を木目の上にまぶしく落としていた。寝台から起き上がり、シモンは花を手に取…

忘れじの詩(うた)・5

 シモンが食堂の脇を通り過ぎ、厨房に入った。その姿と食堂を交互に見て、伯爵が声をかけた。「用意されているが」驚いたシモンがテーブルの上を見ると、確かに湯気の立ったスープや保存食のタラの燻製を調理したあたたかい練り込みパイがつつましく並べられ…

忘れじの詩(うた)・4

 雲を通した薄い日差し。髪を梳かす乾いた風。太陽も雲の返しも秋の様相であるのに、中庭に渡るそれは未だ強く緑を残す初夏の景色に不似合いだった。 この場所こそが異質であるのに、白い壁に囲まれた要塞の存在感は、舞い下りた秋の性質こそが邪魔であると…

忘れじの詩(うた)・3

 その夜に見た夢もいつもと代わり映えのしない内容だった。 上半身を裸にされ、鞭打ち台に手足を縛られている。 気づいたときには喉から意思の流出を塞ぐようにきつく顎を噛みしめていた。ひとことも声を漏らさぬように、どんな責めにも屈しないように。 …

忘れじの詩(うた)・2

 幻滅したような、あるいは退屈でしょうがないような表情を、伯爵は真向かいに座る彼に向けていた。魔王と吸血鬼狩人が同じ食卓についていた。不安定な存在を維持するために伯爵は彼のそばを離れられず、青年もまた彼につきまとわれて迷惑そうだが、直接害の…

忘れじの詩(うた)・1

 7年は耐えた。 朝靄に似た薄い光がまぶた一枚をへだてた浅い意識を覆い、彼に夢を見させず、また別の朝を迎えさせたが、望みもせず見慣れることとなった寝室の光景は、ベルモンド家の血を引く青年シモンに日次気の触れたことを自覚させた。 この日常に平…

L・クロス

L・クロスを磨くシモンと磨き終わるのを待つ伯爵。

同席者

伯爵とシモンは本の世界で再会を果たす。

c-s(CountとSimon)

自慰を見られた伯爵と、彼を慰めるために自慰を見せるシモン。