忘れじの詩(うた)・あとがき 2012年6月のあとがき 去年の9月頃(平成23年)から書き始めた作品がようやっと終わりを迎えたので、少々、この作品に取り組むことになった経歴などを書きたいと思います。 きっかけはpixivで拝見した数々のファンアートでした。 それまで悪… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・31 幾たびもの季節を繰り返し、今年も新雪の積もる冬が訪れた。 道も足も雪に埋まる安寧の時期に外出するものは、風によって凍る前に、やわらかい新雪を目的地まで踏み抜いてゆかねばならない。 体力をつけるのに丁度いいと、孫を連れだし、シモンは自分のそ… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・30 教会のベッドで彼は目覚めた。 ふらふらとさまよい歩いていたところを教会関係者に保護されたのだ。 三日間、こんこんと眠り続け、ようやく話ができるまでに回復した彼を待ち受けていたのは、裁判の誤りを告げる通知と、今後彼の血筋であるベルモンド一族… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・29 天地の境もなく星がまたたいている。 炎の喧噪もここまでは届かない。 水草のほとり、白鳥が眠りについている。真新しい墓、乾燥した大地、土に埋もれた花は白く、ときおり風が吹いては褪せた色の草原に波を描く。 伯爵が転移の術を行使したのだろう、気… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・28 長い長い行進が終わりを迎えた。 町を抜けて城門にたどり着いたシモンのそばから、金色の魂が離れていく。安寧の地にふたたび帰るように、狩人にすべての信頼を寄せて、勝利を願う表情で、天へとのぼっていく。 ひとつのひとつの魂に感謝し、シモンは狩人… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・27 英雄であるはずの狩人が魔王と通じているという噂は、トマス自身がふれまわらずとも、本人不在の裁判で立証されたことだった。トマスは裁判の結果をひとりふたりに話しただけだ。話はそのまま人々のあいだを波濤(はとう)となってうねり、さざめき、端まで… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・26 すべてを燃やし尽くそうとした炎が鎮火し、要塞内は煤と白い煙がたちこめていた。突風が吹いて、その名残を空に飛ばした。女吸血鬼は室内に侵入した煙も同じように払ったのだ。青年はまだ眠っている。夢を見ているのだろうか、その表情はとても静かだ。 突… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・25 雨に濡れる町。 時おり雷鳴が轟き、人々を、家々を震わせる。 ここは以前、狩人と竜公が訪れた小さな民家だ。いまとおなじ夜中に、彼らが尋ねてくるのをわかっていたように、その家の窓からは暖炉の明かりがもれていた。 伯爵は音もなく、細かな影を密集… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・24 時のとまった若木が煙に燻されその葉を暴力的な死にわななかせている。火の粉が幕壁(まくかべ)をこえて空を飛びかっている。中庭は半分以上が火の海だ。井戸の屋根は焼けおちて、煤とともに大小の破片が水の底へと沈んでいった。熱気にあおられた鐘楼から… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・23 今宵は三日月。 魔法の明かりであたりを照らしながら山道を進む一群があった。提灯持ちもいるにはいたが、細い薄明かりの月夜では、ランタンよりもやはり魔法の明かりのほうが便利だった。 道は要塞教会に続いていた。 先頭をイデュリ主教が歩いていた。… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・22 シモンの祈りは星が落ちるように地の底へ下っていった。 底の底へ――世界が変わるほどの下層へ、力も光も失わぬ祈りが行き着く先には、墓所と同じような白霧が漂っていた。 もやのかかった、なにもない空間に、黒い影が立っていた。気品と威厳に満ちた確… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ
忘れじの詩(うた)・21 ロザリオを携え、玄義を唱えると、巨石によって封じられていた大橋が開いた。道は城門へと続いている。人の愚かな儀式の末、この世に現れたかりそめの城だ。シモンは疲労を感じさせぬ足取りで城内へ歩んでいく。 この城に天守はない。階段を下る道も石によ… 2012-06-24忘れじの詩(うた)ドラシモ