ここへ来てから初めて夢を見た。
夢を見ないように鳴海と交わっていたのに。
夢の続きも鳴海に抱かれていたからなのか。
さんざんに抱かれたあとで自分の鍵入れに収める細長い鉛がなかったことに気がついた。
「鳴海さん、僕に鍵をくださいよ」
鳴海は背を向けたまま隣に寝ている。
「ねぇ、僕はこれから帰れないかもしれない旅に出かけるんです」
肩を揺すった。鳴海は振り向いた。煙のようなもやのかかった眼差しだった。
「じゃあ鍵なんていらないだろう」
あぁそうかと思った。それなら確かに鍵はいらない。けれど、でも。
「もし帰ってきたら、扉を開けてくださるのでしょうか?」
どこか壊れたように噛み合わせの悪い笑顔で尋ねる。鳴海は答えた。
「お前の家は俺がいるところなのか?」
鳴海は迷惑そうな顔をしてライドウを打ち見る。すぐに身を起こしてどこかへ消えた。
手にあるのはみっつの角柱が合わさったひとつの神具だった。
彼の言葉はこれを光らせることはなかった。
光らない神具を携えて“帰れないかもしれない”場所へ赴き、そして戻ってきた。
犬が目の前にいる。
『あなたの夢はなに?』
答える口を持っていなかった。
犬の瞳が失望に澱む。
「違う、僕は……覚えていたはず、だけど僕がそれを夢見ていいのかどうかわからない!」