シモンはふたたび夢を見た。
白い石造りの開放的な神殿に青年がいた。
シモンは金のネックレスのほかには絹の腰布一枚、それにサンダルのみという格好をしていた。
わずかな衣類が頑健な肉体をより健美に、肉感的に見せている。
そのまま石と変えられて神々に献上されそうな完璧な美を宿した青年は、なにかに導かれるように建物の奥へと歩んでいった。
外は妖しげな紫色の夜。柱のあいだから三日月の光が射している。
蓮の浮いたプールに挟まれる道を通ると、階段の上、玉座に腰掛ける彼がいた。
いつもの夜会服ではない。袖のふくらんだやわらかな白い絹のシャツと、ゆったりとした黒のズボンを身につけている。
軽装であるのに威厳は変わることがなく、今の彼には、まるで休暇を楽しんでいるような落ち着いた雰囲気と、ため息が出るような壮年の魅力が備わっていた。
伯爵はシモンを見つめた。風が吹いて、金髪がさらりと流れる。
それを合図とするように、シモンはゆっくりと彼のもとへ歩みを進めた。
玉座の横に膝をつき、手すりの近くへと頭をもたれる。
その反応を褒めるように、伯爵の美しい手が青年の頭をなでた。
「ここはどこだ」
「どこでもないさ。いつもと趣の違った場所で愛し――いや、罰を与えたくなったのでな」
「まだ言っているのか。私はお前と離れるつもりはない。黙って別れを決めることなどあるものか」
「ではなぜ目覚めているあいだはわたしのもとを訪れないのかね」
「聖鞭を満足に扱えない状態で会うわけにはいかぬ。なんとか元の力を取り戻そうと努力しているんだ。それに、まだたったの二日だ。夢の中で苛まずに、私を信じて待っていてほしい」
「余計な精を解放すると言ったろう? そのネックレスは自身の内にある欲望を昇華する手伝いをするんだ。つまりこれは君の願望を表しているんだ。無理な理由をつけてめちゃくちゃに犯してほしい、得体の知れない魔物に穴という穴を貫いてほしいとな。そのうえで最後にはわたしに愛してほしいと――ネックレスはそんな君の淫らな願いを叶えているにすぎない。忘れてはいけないよ、この夢は君が見ているのだから――わたしが見せているのではない」
「嘘だ、お前は思い込みが強いから、なにか妙な邪推をして、私を苦しめているんだ。こんな場所で、こんな格好をして、お前のもとにひざまずくのが私の願望であるはずがない。昨日見た夢だって、私はひどく嫌がっていたじゃないか――」
言葉を振り払おうと必死に口を動かすシモンだったが、そんな彼には目もくれず、伯爵は秘めやかな動きをした。
そちらを見上げたシモンははっと目を見開いた。
伯爵は自身をくつろげ、青年に見せるように逸物に手を添えていた。
黙らせるように、伯爵が上の立場から見下ろすと、シモンは膝立ちのまませっつくように移動して、伯爵の前にひざまずいた。
そして伯爵の股間に顔をうずめた。
青年の求めてやまぬような舌の動きを感じながら、伯爵は遠い瞳で外の景色を眺めていた。
紫の夜。柱の隙間から見える月、シェルピンクの砂漠。
ゆらゆらと蓮が揺れるふたつのプール、白い石造りの厳かな神殿。
男根にむしゃぶりつく青年をなんの感慨もないまなざしで見下ろしたあと、伯爵はその光景に飽きたように瞳をとじた。
すべてが砂のように消えていく。
ふたたび目を開けたとき、そこは広い寝台だった。
天蓋つきの薄いレースに囲われたベッドの中で、シモンは場所が変わったことにも気がつかないように伯爵の肉茎を愛撫していた。
「犬のようだな」
シモンはなにも言わなかった。激しい音を立てて彼の男根を吸い上げていた。
苦笑するように伯爵は天蓋を見上げた。
「君を犬らしく振る舞わせたかった。尻に犬のしるしを突き入れて、しっぽを揺らす君と、あの蓮のプールのまわりを一周しようとな。散歩、トイレのしつけ、鳴き声に至るまで犬らしく貶めてやろうとした」
しかしつらいよ、と伯爵は優雅な手つきで目元をおさえた。「君をそんなふうにはしたくない。あぁ、君はなんと欲望に忠実になってしまったことだろう。このような飾りを渡すべきではなかったのかもしれない。現実で会えないのなら、せめて夢の中だけでもと思った。その結果がこんな――」
伯爵はシモンを見つめた。腰布一枚に覆われた尻を高く突き上げ、たまらないほどの美しい肉体を彼に捧げたひとりの青年を。
伯爵の呼吸は荒く逆巻いた。
「まぁ、この状態も良いものだ」
伯爵はレースに視線を飛ばした。薄布の向こうに人影が現れた。
音なくレースをめくり、寝台へと上がるふたりの人物。
かつて偶然により顔を合わせたことのあるもうひとりの自分達だった。
伯爵は青年の顎に手を添えて「シモン、顔をお上げ」と囁いた。
青年はいつのまにか現れたふたりに怯えたが、ふたりからキスや抱擁を交わされると、まなざしはとたんにとろけて、表情は甘えるような微笑を見せた。
これから三人がかりで自分を愛するのだ。
そんなことがわかっているような、薔薇色の頬だった。
シモンは膝立ちになって三人の肉棒を同時に愛撫した。
口にしゃぶり、左右の手を使って、上下にしごく。
喉の奥まで突かれて、むせる直前になると引き抜かれ、次はこちらと、三人の雄を平等に口に含ませられた。
それは自らが積極的に行っていた。
愛し足りないことがないように、順番に、手を休めることなく奉仕する。
時折、三本同時に口に含ませられた。
すべては口に入らず、嬲るように鼻に押し当てられて、青年はその美しい顔を滑稽に歪められた。
しかし彼の奉仕への意欲は変わることがなかった。
青年は三人の腰が寄ると幸福を感じた。
求められることが嬉しくてしょうがなかったのだ。
口と手だけで奉仕する今の段階がもどかしく思えて、きつく眉をひそめると、焦らなくていいよとなだめられるように、髪を梳かれたり、耳や顎をなぞられたりした。
やがてひとりがシモンの頬や鼻筋に精を放った。
続いてもうひとりが美しく輝く金色の髪に精液を飛ばした。
最後のひとりが口の中に精子を注ぎ込み、シモンはそれを当然のように飲み下した。
シモンはまるで愛し抜かれたようにへとへとになってシーツに突っ伏したが、彼の男根は刺激を受けないまま腰布の下で熱く張り詰め、布を高く持ち上げていた。
ひとりがそんな彼の窮屈そうな腰布をほどいた。
サンダルを脱がせて、裸足にさせる。
ネックレスのほかは生まれたままの姿となった彼は、三人にその美しい体をじっと見つめられたあと、三者三様の愛撫を身に受けたのだった。
疲れ果てた口を慰められるように吸われ、乳首をそれぞれ違うリズムで舌で転がされると、青年はおもしろいほどの甘美な反応を示した。
誰もの征服欲を満たすような可憐で純粋な甘い声。
身もだえる様を見た三人は勢いがついたようにシモンを責めた。
腋の下を舐め、胸を揉み、指の合間に舌を這わせる。
ふたりがかりで陰茎を舐め上げて、ひとりはたまらないように、青年の口に男茎を押し込んだ。
再度の奉仕を受けながら、青年の硬く尖った淡紅色の乳首をいじる。
やがて青年はうつぶせにされて、尻を高く掲げるように命令された。
言うとおりにしたシモンの肛華を、三人の指が角度を変えて間断なく貫く。
「シモンはここがいいんだ」奥のある一点をこねあげて伯爵が囁く。
「ここも反応がいいぞ」違う場所を掻いて赤毛の青年が笑う。
「一番はここだ」すぼまりを押し開いて黒髪の伯爵が喉を鳴らす。
シモンの鈴口からはたらたらと露がこぼれている。
誰か、誰か早く貫いて――シーツに泣き声をこもらせながら、シモンは尻をもてあそばれるのに耐えていた。秘部を苛められ、見られる心地よさにじんじんと体を震わせながら。
慣らしと精査を終えて指が引き抜かれた。
伯爵が横たわり、男根に手を添えて、ここに腰を下ろすようシモンに命令した。
青年は言うとおりにした。深く腰を沈めて、息を抜く。歓喜に涙がこぼれた。
ふふ、と伯爵が笑い「泣くにはまだ早いぞ」と青年の頬を指で拭った。「そのままうつぶせるんだ。わたしに体を預けて、ゆっくりと――」
伯爵の上に横たわるかたちとなったシモンは、後ろから覆い被さる感覚にとまどった顔を向けた。
まさか。でも、腰をつかまれてしまった。
あ、あ、尻の中にもうひとつが――入って、くる。
なにもわからないまま、シモンはふたつめの男茎を受け入れた。
伯爵同士に挟まれた圧迫感からか、シモンは声も控えめにぽろぽろと涙を流した。
その様子をもうひとりのシモンがおもしろそうに見ていた。
彼の息が整うのを待って、泣いている自分の顔を上向ける。
呆然と目を見開くシモンの前に、腰が寄った。
「あ、いや、いやだ――息が、できない」
「夢の中だよ。大丈夫さ」
赤毛の青年は自分自身の口に陰茎を押し込んだ。
それが始まりのように、三人の腰が動いた。
んん、んん、と激しく声をこもらせて、シモンは三人から与えられる苦痛と快楽を堪え忍んだ。
翻弄される。中をかきまわされる。苦しいのに気持ちいい。
三人の声があちこちから優しく響く。
「かわいいよシモン」
「愛している、シモン」
「君はとても美しいな、シモン」
頭の中で『あ、あ、』と声を上げながら、シモンは彼らを愛した。
そして彼らもシモンを愛し抜いた。
ふたりが同時に尻の中へ精を注ぎ込む。口の中にもこってりと放出する。
三人が達するあいだにシモンは二回も三回も果てて、尿なのか潮なのかわからないものを恥ずかしげに漏らした。
そんな痴態を嫌がることなく、三人は代わる代わるに青年を貫いた。
ひとりが疲れて休憩を取るあいだに、残るふたりはシモンを前後から責めた。
ひとりだけがシモンを相手にすることもあり、残るふたりは談笑をしたり、飲み物を飲んだり、軽く口づけを交わしたりして、ベッドの上で愛し合うふたりを見守りながら、なにごとかを囁いた。
くすくすと笑い合い、そしてまた寝台へと戻り、三人同時にシモンを愛した。
青年は幾度果てても気を失うことはなかった。
永遠に続くかに思われた性交にシモンは最後まで身をゆだねて、三人から祝福のキスを受けた。
それは優しい目覚めのキスのように思われた。
薄い月明かりを感じてシモンは目を覚ました。
すっきりとした頭、痛みも疲れも残っていない体。
夢も見ずに、ほんとうによく眠ったようだ。
今日もいつもと同じように鍛錬を重ねよう。邪な心がなければ、鞭もきっといつかは、前と変わらない力を授けてくれるはず――。